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サトゥの死ぬまでシネマ。

サトゥの死ぬまでシネマ。

第9話。

「第9話 サイン・イズ・ヴィクトリー」
ノリコとの全面対決のせいで、俺は見逃したが、その日、クニオと野ザルは一緒に下校した。その光景は誰もが見ることとなり噂はさらに広まった。しかし、作戦はまだまだ始まったばかりだった。俺とケイタは2人で「罰ゲームで1週間限定でカップルになり、野ザル(クラスメイト達にはまだこのアダ名は浸透させていないけれど)は意外にノリがよくて、その罰ゲームに参加してくれている」というのを噂にハサミこむことにした。その理由はまず、「野ザルをだましている」と思われると俺達が悪党になってしまうというのがある。実際、「お前達の罰ゲームにしてはタチがわりいと思ったんだよ」「サルノってお前たちの遊びにつきあうなんて、意外とおもろい娘なんだな」という意見がクラスメイトから出ている。第2に、あくまで自然に野ザルを俺達のグループに誘わせるため。というのがある。いきなり俺達男子3人組に女の子が一人加わるのは不自然過ぎる。ケイタに言わせれば罰ゲーム参加型も不自然だぜ。とのことだが。Pとしてそれは無視した。第3の目的は野ザルのキャラ付けだ。クラスでの存在は「暗い」だけ。転校初日からイジメでもなんでもなく誰もが話かけづらい雰囲気を彼女は持っていた。その存在はそのまま「イジメの対象」へとシフトチェンジしていった。最初にノリコが「アイツ、暗いからなんかヤダ。皆シカトの方向で」のひとことで全てが始まっていることを同じクラスの浅田美代から聞いていたが、それはノリコがあくまできっかけだっただけで、本人には悪いがもしミヨが同じことを言っていても悪い方向に行くに違いない。クラスという世界において、ある程度の力をもっている者に従うという構図は昔からある風景だ。しかし、そのシフトチェンジが完全に終わる前に俺のプロデュースが始まったのは幸いだったと思う。今はノリコが完全命令でシカトをしているわけではないし(実際同じニオイだと感じとられてしまった、同人誌が好きな女子がたまに話しかけているが、お咎めはない。しかし、これは俺の宣戦布告のおかげかもしれない。もし、プロデュースが失敗したら彼女はイジメを再開するだろうか?いや、彼女はそこまで悪いヤツではないと思いたい)、いわゆるお子様特有の、「別にシカトしてるわけじゃあ、ないしぃ。かといって話しかける必要もないしぃ」というきっかけ待ちの状態なのだ。説明が長くなったが、最初についてしまった「暗い」というイメージをこの罰ゲーム期間中に、払拭させねばならない。そう、エサ待ちのお馬さんたちにおいしいニンジンをあげるのだ。
「そこで、お弁当大作戦だ」ここは理容ナカニシ。いつものメンバーでの定例会議だ。今日はヨウコも参加している。
「弁当?」
「そう。罰ゲームとはいえ、つきあっているっつう名目で野ザルがクニオにお弁当を作ってくるんだ。ギャグで。へえ。そんな女の子らしいとこもあるんだ。と皆に思わせるところから始まる。ツンデレで行きたかったけど、そこまでのプロデュースは必要ない。普段暗い子の新たな一面ってだけで壁がくずれ、とっかかりになる。問題は弁当だけど、ここはヨウコ。お前にまかせた。料理得意だからな」
幼なじみのよしみでたまにヨウコが弁当を作ってくれるおかげで、俺はクラスの男子から羨望の眼差しを浴びることができる。
「いいよ。明日、どっかで野ザル・・・。サルノさんに渡せばいいんでしょ」
「・・・私自分でやってみたい・・・あと・・野ザルでもいいよ・・・」
俺以外の3人は驚いていたが、実は俺はこの答えを密かに期待していた。
「・・・でも。料理自信ない・・・」
「私教えるよ。正直、私まだ協力してないと思ってたし。出番少ないし」
おいおい。ストーリーの心配をするのは俺だけで充分だぜ。ヨウコ。
「・・・ありがとう・・・」
よっしゃ。明日はヨウコの家で料理特訓だ。あさってから作戦開始。今日は解散!」
帰り道、俺は野ザルと2人になっていた、その経緯は省くが、まあ、作者の粋なはからいってとこか。
「・・・Pいろいろありがとう・・・」
「なあに、俺も楽しんでるよ」
「・・・自分が嫌になる・・・この暗さ・・・別にトラウマもないのに・・」
「おまえなあ。俺も最初は、性格もプロデュースしようと思ったけど、どうこうなるもんじゃない。人それぞれなんだから。俺のプロデュースは一見ヤラセに見えるけど、お前の『暗い』とこ以外の一面を皆に見せるっつう演出なんだよ。お前の今日の何某は俺のツボだったし、転校初日に、声かけなかったこと後悔してるぐらいだぜ。それにバイトもちゃんとやってるんだろ。お前自身、自分の違う一面をみつけられたんじゃないか?」
彼女は静かにうなづいた。
「・・・でも自分はやっぱり普通じゃない・・・」
「普通っつうのは所詮、多数決の世界だよ。ひとつとってみれば、あくまで個人の意見だ。小規模アンケートの世界だぜ。世界は広い。お前を『普通』っていうヤツだっている。それが少数意見でも、それもまた個人の意見だ」
「・・・Pいいこと言う・・・」
それは作者が野ブタ。の原作を読み終えたせいだった。
「そうそう。おまえにわたすもんがあんだ。これ。『シーズ・オール・ザット』っつう映画のビデオなんだけど、おもろいよ。レイチェル・リークック最強。参考とまでは言わないけど、ダサい女の子がカワイクなる話だし」
「・・・ウチにビデオがない・・・」
わーお。ヘヴィだ。
「そっか・・・。そうだ。プロデュースが成功したらプレゼントしよう資金も余るハズだし」
「・・・電動自転車もウチにはない・・・」
わーお。パーフェクト、完璧だ。
「さりげなーく、欲しいものいうお前が好きだぜ」
俺はおちゃらけて言った。
「・・・私も・・・」
俺は動きが止まった。私も?え?何?この展開?いや最終回にしてくれよ。そういうのは、今はノリコとの問題もあるってのに。
「・・・冗談だ。そろそろ今日の何某だと思ったから・・・」
わーお。ヘヴィだ。作者め。一瞬本気にしたじゃねえか。
いつのまにか自分の家の前まで来ていた。
「ここ・・・おれんち。あっそうだひとつ聞いておきたいんだけど」
「・・・なに?・・・」
「お前、同じ名前の女の子と知り合ってないよな。例えばバンドやってる女の子とか、その、グラマラススカイ的な・・・」
「・・・グラ?・・いや、そんなことはないけど・・・なんで?」
「いや、なんでもない。それより明日、料理がんばれよ」
どうやら、まだNANAはパクっていないようだ。

第10話
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